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【実は10人に1人】子どもの永久歯が生えてこない?先天性欠如の原因と後悔しないための選択肢

乳歯が抜けたのに…永久歯が生えてこない「先天性欠如」とは?

「周りのお友達は、乳歯が抜けてから大人の歯がどんどん生えそろってきているのに、うちの子は抜けたままなかなか生えてこない…」 「もしかして、何か問題があるのかしら?」

お子様の成長の一つである歯の生え変わり。個人差があると分かってはいても、我が子のこととなると、心配な気持ちになりますよね。

通常、乳歯が抜けると、その下で待機していた永久歯(大人の歯)が顔を出します。しかし、乳歯が抜けてから数ヶ月、場合によっては1年以上経っても永久歯が生えてこない場合、その原因の一つとして「先天性欠如(せんてんせいけつじょ)」の可能性が考えられます。

「せんてんせいけつじょ…?」 聞き慣れない言葉に、さらに不安を感じられたかもしれません。簡単に言うと、先天性欠如とは「生まれつき、永久歯の元となる“タネ”(専門用語で歯胚:しはい と言います)が、あごの骨の中に作られていない状態」のことです。そう聞くと、とても大変なことのように感じますよね。ですが、ご安心ください。 種がなければ芽が出ないのと同じように、歯の“タネ”がなければ、どれだけ待っても永久歯は生えてきません。

「じゃあ、うちの子もそうなの?」とご心配になるかもしれませんが、まずはこの先天性欠如について正しく知ることが、不安を解消し、適切な対処をおこなうための第一歩です。 この記事で、一緒に一つずつ確認していきましょう。

なぜ起こるの?先天性欠如の原因と、10人に1人という事実

「そもそも、どうして永久歯の“タネ”が作られないことがあるの?」 「遺伝や、妊娠中の食生活などが関係しているのかしら?」

そのように、原因が気になる方も多いことでしょう。

永久歯の先天性欠如が起こるハッキリとした原因は、実はまだ完全には解明されていません。しかし、現在では以下のような要因が複雑に関係しているのではないかと考えられています。

  • 遺伝的な要因
  • 妊娠中の栄養状態のトラブル
  • 全身的な病気
  • お薬の副作用 など

ただ、多くの場合で直接的な原因を一つに特定するのは難しく、「お子様固有の体質」と捉えるのが実状に近いかもしれません。ですので、「私のせいで…」などと、ご自身を責める必要はまったくありませんので、ご安心ください。

そして、ここで知っていただきたい、とても大切な事実があります。 それは、永久歯の先天性欠如は、決して珍しいことではない、ということです。ある調査では、日本人のおよそ10人に1人の割合で、永久歯の先天性欠如が見られるというデータが報告されています。これは、学校のクラスが40人だとしたら、その中に3〜4人は同じ状況のお子さんがいる、という計算になります。

「うちの子だけなのでは…」という不安が、少し和らぎましたでしょうか。ちなみに、先天性欠如はどの歯にも起こる可能性がありますが、特に下のあごの、前から5番目の歯(第二小臼歯)や、上のあごの、前から2番目の歯(側切歯)によく見られる傾向があります。

このように、先天性欠如は特別なことではありません。 しかし、もし歯が足りない状態をそのままにしておくと、将来的にいくつかの問題が出てくる可能性があります。 次の章では、そのリスクについて詳しく見ていきましょう。

なぜ問題なの?放置することで起こりうる4つのリスク

「10人に1人もいるなら、そこまで心配しなくても大丈夫なのでは?」 前の章を読んで、そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、歯が1本足りないという状態を、適切な管理をせずにそのままにしておくのは、将来のお口の健康にとって、残念ながらあまり良いことではありません。

歯は、1本1本が独立しているように見えて、実は隣同士、そして上下で噛み合う歯と支え合い、絶妙なバランスを保つ「チーム」として機能しています。チームの一員が欠けると、そのバランスが少しずつ崩れ始め、ドミノ倒しのように様々な問題を引き起こす可能性があるのです。

ここでは、先天性欠如を放置することで起こりうる、代表的な4つのリスクについて解説します。

1. 歯並びの乱れ|空いたスペースが全体のバランスを崩す

歯が抜けたままのスペースがあると、隣の歯がその空間に倒れ込んできたり、噛み合う相手のいない向かい側の歯が伸びてきたりします。その結果、見た目が「すきっ歯」になるだけでなく、お口全体の歯並びがガタガタになってしまい、後々の治療がより複雑で大掛かりになる可能性があります。

2. 乳歯の寿命|いずれ抜けてしまう可能性が高い

下から永久歯が生えてこないため、乳歯が大人になっても残ることがあります。しかし、乳歯は永久歯に比べて根が短く、歯の表面も柔らかく弱いため、虫歯や歯周病になりやすいという弱点があります。いずれはグラグラになって抜けてしまうことが多く、抜けた後には、リスク1で挙げたような歯並びの問題がより深刻化してしまいます。

3. 噛み合わせの悪化|顎の不調や消化不良の原因に

歯が足りないことで、食べ物をしっかりと噛み砕くことが難しくなります。これが続くと、胃腸への負担が増えるだけでなく、左右の顎のバランスが崩れ、「顎関節症(がくかんせつしょう)」を引き起こしたり、お顔の歪みの原因になったりすることもあります。

4. 発音・成長への影響|お子様の健やかな発育のために

特に前歯が先天性欠如の場合、息が漏れてしまい「サ行」や「タ行」などが発音しにくくなることがあります。また、正しく噛むことで得られる刺激は、あごの骨の健全な成長を促します。その刺激が不足することで、あごが十分に発達しない可能性も指摘されています。

このように、先天性欠如は見た目だけの問題ではなく、お口全体の機能に関わる重要な問題なのです。 では、こうしたリスクを避けるために、歯科医院ではどのようにして先天性欠如を診断し、どのような準備をしていくのでしょうか。次の章で見ていきましょう。

レントゲンで早期発見!歯科医院でのシンプルな診断の流れ

「うちの子も、もしかしたら先天性欠如かもしれない…」
「歯医者さんでは、どんな検査をするんだろう?痛いのかな?」

前の章を読んで、具体的なリスクを知り、ご心配が大きくなったかもしれません。 ですが、ご安心ください。先天性欠如があるかどうかは、歯科医院での痛みのない簡単な検査で、すぐに、そして確実にわかります。

その診断の決め手となるのが「レントゲン撮影」です。 レントゲンを撮ることで、まだ歯茎の中に隠れている永久歯の“タネ”が、そこにあるのか、ないのかを直接目で見て確認することができるのです。

歯科医院での診断の具体的な流れ

実際に歯科医院にお越しいただいてから、診断までの流れは非常にシンプルです。

  • Step 1:カウンセリング(問診) まず、親御さんからお子様の歯の生え変わりの状況や、気になっていること、心配なことなどを詳しくお伺いします。どんな些細なことでも、遠慮なくお話しください。
  • Step 2:お口の中のチェック(視診) 次にお口の中を拝見し、どの歯がまだ生えてきていないか、周りの歯や噛み合わせの状態などを目で見て確認します。
  • Step 3:レントゲン撮影で確定診断 そして、お口全体の様子が一度にわかる「パノラマレントゲン」というレントゲン写真を撮影します。撮影は短時間で終わり、もちろん痛みは全くありません。 この写真を見れば、あごの骨の中に永久歯の“タネ”があるかどうかが一目瞭然です。そこに“タネ”が確認できなければ、「先天性欠如」であると確定診断ができます。

気になる…と思ったら。受診のベストタイミングは?

「検査が簡単なのは分かったけど、いつ頃歯医者さんに行けばいいの?」という疑問も当然ですよね。 一般的には、以下のタイミングでのご相談をおすすめしています。

  • 前歯の生え変わりが始まる6〜7歳頃
  • 奥歯の生え変わりが見られる9歳以降
  • 乳歯が抜けてから半年〜1年以上たっても永久歯が生えてこないとき
  • 学校の歯科検診などで「歯の数が足りないかも」と指摘されたとき

もちろん、これ以外の時期でも、親御さんが「あれ?」と少しでも気になったときが、最適な相談のタイミングです。

このように、診断自体はとてもシンプルです。そして何より、早期にこの事実を把握しておくことが、将来の治療計画を立てる上で非常に重要になり、お子様にとっての選択肢を広げることに繋がるのです。

では、もし先天性欠如と診断された場合、どのような治療の選択肢があるのでしょうか。次の章で詳しく見ていきましょう。

将来を見据えた治療法の選択肢

先天性欠如と診断され、「これからどうなってしまうんだろう…」と、将来を不安に思われているかもしれません。でも、どうかご安心ください。現代の歯科医療には、お子様の未来のお口の健康を守るための、様々な素晴らしい選択肢が用意されています。

大切なのは、お子様のあごの成長やライフプランに合わせて、最適なタイミングで、最適な治療法を選ぶことです。 すぐに何か治療を始めるのではなく、まずは定期的に検診を受けながら、周りの歯の生え変わりやあごの成長の様子を見守る「経過観察」という期間を設けることも、重要な選択肢の一つとなります。

その上で、将来的に歯がないスペースを補うための代表的な治療法をいくつかご紹介します。

選択肢① 矯正治療:ご自身の歯を動かし、歯並び全体で解決する

歯列矯正によって全体の歯を動かし、歯がない部分のスペースを閉じてしまう方法です。

  • メリット:ご自身の歯だけで歯並びを完成させられるため、最も自然な仕上がりになります。健康な歯を削る必要もありません。
  • デメリット:治療期間が比較的長くなる傾向があります。また、歯の移動量や噛み合わせの状態によっては、この方法が適さない場合もあります。
  • 適用時期の目安:あごの成長段階から治療を開始できます。

選択肢② ブリッジ:両隣の歯を支えにして歯を補う

なくなった歯の両隣にある健康な歯を少し削って土台にし、そこへ橋(ブリッジ)を架けるように一体型の人工歯を装着する方法です。

  • メリット:比較的、治療期間が短く、固定式なので食事の際の違和感も少ないです。材質によっては保険が適用される場合もあります。
  • デメリット:支えにするために、健康な歯を削らなければならない点が最大のデメリットです。また、土台となる歯に負担がかかり続けます。
  • 適用時期の目安:あごの成長がある程度落ち着いてからが望ましいです。

選択肢③ インプラント:天然の歯に近い機能と見た目を取り戻す

歯がない部分のあごの骨に、チタン製の人工の歯根(インプラント)を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。

  • メリット:周りの歯を削ることなく、独立して歯を補えます。ご自身の歯とほとんど変わらない感覚で、しっかりと噛むことができます。
  • デメリット:外科的な手術が必要です。保険が適用されないため、費用は高額になる傾向があります。
  • 適用時期の目安:あごの骨の成長が完全に止まってから(一般的に18歳〜20歳以降)でないと、治療を行うことができません。

あなたのお子様に最適な治療を一緒に考えます

ご紹介した以外にも、成長期に一時的に「入れ歯」を入れるなど、選択肢は様々です。 どの治療法がベストかは、歯が足りない場所、本数、他の歯の歯並びの状態、そして何よりお子様ご本人とご家族のご希望によって、一人ひとり全く異なります。

私たちは、ただ治療法を提示するだけでなく、お子様の10年後、20年後を見据え、ご家族皆様が心から納得できるゴールを目指すパートナーでありたいと考えています。

まとめ|お子様の歯の数を一度確認してみませんか?

ここまで、永久歯の先天性欠如について、その原因からリスク、そして未来のための治療法まで詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。お子様の歯がなかなか生えてこないというご心配が、少しでも解消され、前向きな知識に変わっていれば幸いです。

最後に、この記事の重要なポイントをもう一度振り返っておきましょう。

  • 「先天性欠如」は特別なことではありません 日本人のおよそ10人に1人に見られる症状であり、決して珍しいことではありません。
  • 放置は将来のリスクに繋がります 歯並びや噛み合わせなど、お口全体の健康に影響が出る可能性があるため、早期の把握が大切です。
  • 診断はシンプルで、痛みもありません 歯科医院での簡単なレントゲン検査で、すぐに確定診断ができます。
  • 未来を守るための選択肢はたくさんあります 矯正治療やブリッジ、インプラントなど、お子様の成長に合わせた様々な治療法から最適なものを選べます。

この記事を通してお伝えしたかった最も大切なことは、「いたずらに不安がるのではなく、まずはお子様のお口の状態を正しく知ること」です。もし、お子様の歯の生え変わりに少しでも気になることがあれば、それは専門家に相談する良い機会のサインです。

今晩にでも、歯磨きの際に「大人の歯は何本になったかな?」と、お子様と一緒に楽しく歯の数を数えてみてはいかがでしょうか。そんな日々のちょっとした関心が、お子様のお口の健康を守るための、何より大切な第一歩になります。

歯並びに関するご相談は当院まで

お子様の歯並びについて、「うちの子は矯正が必要なのかな?」「どこに相談したらいいんだろう?」と悩まれたことはありませんか。かわべ歯科クリニックでは、お子様の歯並びや噛み合わせに関するご相談を随時受け付けております。

まずはお口の中を拝見し、現状を分かりやすくご説明いたします。その上で、精密な検査の結果、専門的な矯正治療が必要だと判断される場合には、当院が責任をもって、信頼のおける矯正専門の医療機関をご紹介させていただきます。

「いきなり矯正歯科に行くのは少し敷居が高い」と感じられる方も、まずは「かかりつけ医」として、お気軽にご相談ください。保護者の方のご不安に寄り添い、最適な次の一歩を一緒に考えさせていただきます。

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