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横向き親知らずの抜歯は高い?まっすぐな歯との難易度・費用の違いを解説

「親知らず、そろそろ抜いた方がいいのかな…」
「でも、抜くのってすごく痛いって聞くし、怖いな…」

親知らずについて、このような漠然とした不安をお持ちの方は多いのではないでしょうか。特に、「まっすぐ生えている場合と、横向きの場合では、痛みや費用が全然違う」といった話を聞いたことがあるかもしれません。

この記事では、そんな親知らずの抜歯に関する現実的な疑問にお答えします。ご自身の親知らずの状態と照らし合わせられるよう、図解を交えながら「生え方のタイプ別」に、抜歯の難易度や方法、そして費用がどう変わるのかを、分かりやすく解説していきます。

この記事を読み終える頃には、あなたの親知らずへの不安が、正しい知識へと変わっているはずです。

あなたの親知らずはどのタイプ?代表的な4つの生え方

「親知らず」と聞くと、多くの方が「抜くのが痛そう…」「なんだか怖い」といった漠然とした不安を感じるのではないでしょうか。その不安の正体は、ご自身の親知らずが今どんな状態で、どんな向きに生えているのか、はっきりと分からないことにあるのかもしれません。

実は、親知らずの生え方は一つではなく、人によって全く異なります。そして、その「生え方」こそが、抜歯の難しさや痛みの度合いを左右する大きな要因なのです。まずは、ご自身の親知らずがどのタイプに近いのか、代表的な4つのパターンを見ていきましょう。

タイプ1:まっすぐ生えている(正常萌出)

他の奥歯と同じように、比較的まっすぐと歯ぐきの上に出ているタイプです。歯磨きがしやすく、清潔に保てていれば、必ずしも抜歯の必要がないケースもあります。 ただし、一番奥にあるため歯ブラシが届きにくく、気づかないうちに虫歯になってしまうことも少なくありません。

タイプ2:斜めに生えている(傾斜萌出)

歯の頭の一部だけが歯ぐきから見えていて、手前の歯に寄りかかるように斜めに生えているタイプです。日本人に多く見られるケースで、手前の歯との間に食べカスが詰まりやすくなります。 そのため、親知らずだけでなく、問題のない手前の歯まで虫歯にしてしまうリスクが高いのが特徴です。歯ぐきが腫れる「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」の主な原因にもなります。

タイプ3:横向きに生えている(水平埋伏)

歯ぐきの中で完全に真横を向いてしまい、手前の歯の根っこを押してしまっているタイプです。外からは見えないため、レントゲンを撮って初めて気づく方もいらっしゃいます。 強い痛みが出たり、歯並び全体に悪影響を及ぼしたりすることがあるため、抜歯が推奨されることが多いケースです。

タイプ4:完全に骨の中に埋まっている(完全埋伏)

歯ぐきや顎の骨の中に、完全に埋まっていて外からは全く見えないタイプです。 症状がないことも多いですが、隣の歯の根を溶かしたり、「含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)」という袋状のできものを作ってしまったりと、将来的に大きな問題を引き起こす可能性を秘めています。

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「まっすぐ」と「横向き」では、こんなに違う抜歯の方法

前の章で、親知らずには様々な生え方があることをご理解いただけたかと思います。 それでは、「まっすぐ生えている親知らず」と「横向きに埋まっている親知らず」とでは、具体的に抜歯の方法はどう違うのでしょうか。

ここを理解することが、抜歯への漠然とした不安を和らげる第一歩になります。 それぞれの抜歯方法を見ていきましょう。

まっすぐな親知らずの場合:「単純抜歯」

歯の頭がしっかりと見えているまっすぐな親知らずは、「単純抜歯」と呼ばれる方法で抜くことができます。これは、虫歯になった他の歯を抜く手順とほとんど変わりません。

<単純抜歯の主な流れ>

  1. 麻酔: 抜歯する歯の周りに、しっかりと麻酔を効かせます。
  2. 脱臼: 専用の器具を使い、歯を掴んで少しずつ揺らしながら、歯と骨の間にある「歯根膜(しこんまく)」という組織を剥がしていきます。
  3. 抜歯: 歯が十分にぐらついたら、鉗子(かんし)という器具で掴み、引き抜きます。

このように、歯ぐきを切開する必要は基本的にありません。そのため、手術時間も比較的短く、術後の腫れや痛みも少ない傾向にあります。

横向き・埋まっている親知らずの場合:「難抜歯」

一方、歯ぐきや骨の中に埋まっている横向きの親知らずは、そのままでは取り出せません。 そのため、歯ぐきを切開するなどの外科的な処置が必要となり、「難抜歯」と呼ばれます。

<難抜歯の主な流れ>

  1. 麻酔: 単純抜歯と同様に、まずしっかりと麻酔を効かせます。
  2. 切開: メスで歯ぐきを切り開き、親知らずの頭が見えるようにします。
  3. 骨の開削・歯の分割: 親知らずが骨に埋まっている場合は、歯の頭が見えるように骨を少しだけ削ります。多くの場合、そのままでは大きな親知らずを取り出せないため、歯をいくつかに分割して小さくします。
  4. 抜歯: 分割した歯を、一つずつ丁寧に取り除いていきます。
  5. 縫合: 抜歯した穴をきれいに洗浄し、切開した歯ぐきを糸で縫い合わせて閉じます。

このように、手順が複雑になるため、単純抜歯に比べて時間もかかり、術後の腫れや痛みも出やすくなります。

【補足】抜歯後の強い痛みや腫れが心配な方へ

「難抜歯」と聞くと、術後の痛みや腫れがとても心配になりますよね。 当院では、そうした不安を少しでも和らげるため、そして急な痛みや腫れでお困りの方のために「点滴治療」もご提案しております。

お薬を飲むよりも早く、体の中から直接、抗菌薬や鎮痛薬を効かせることができるため、辛い症状を迅速に抑えることが可能です。「少しでも早く楽になりたい」という方は、どうぞ遠慮なくご相談ください。

抜歯の難易度と所要時間への影響

親知らずの「生え方」によって、抜歯の方法が大きく変わることはご理解いただけたかと思います。 「自分はまっすぐだから簡単そう」「横向きだから大変そうだ」と、ある程度の予測はついたかもしれません。

しかし実は、抜歯の難易度を決める要素は、親知らずの「向き」だけではないのです。 他にもいくつかの要因が複雑に絡み合い、一人ひとりの抜歯の難易度、そして所要時間が決まります。他にどのような要因があるのか、見ていきましょう。

難易度を左右する「生え方」以外の要因

1. 歯の根の形や数

地面に埋まっている木の根っこをイメージしてみてください。まっすぐな一本の根よりも、複数の根が絡み合っていたり、先端がカギ状に曲がっていたりする方が、引き抜くのはずっと大変ですよね。 親知らずの根も同様で、以下のような場合は抜歯の難易度が上がります。

  • 根が複数に分かれている(複根歯)
  • 根の先が大きく曲がっている(湾曲根)
  • 根の先が膨らんでいる(肥大根)

2. 骨の硬さや歯との癒着

親知らずは、顎の骨(歯槽骨)に埋まっています。この骨が硬いほど、抜歯は難しくなります。一般的に、年齢が若いほど骨は柔らかく、年齢と共に硬くなる傾向があります。 また、長年放置された親知らずは、骨と癒着して一体化してしまうこともあり、これも難易度を上げる一因です。 「親知らずは若いうちに抜いた方が楽」と言われる理由の一つは、ここにあるのです。

3. 口の開きやすさ(開口量)

親知らずは一番奥にあるため、抜歯の際にはお口を大きく開けていただく必要があります。 顎関節症などで口が開きにくい方や、もともとお口が小さい方は、器具が奥まで届きにくく、術野の確保が難しくなります。そのため、同じ生え方の親知らずでも、抜歯の難易度が上がることがあります。

抜歯にかかる時間の目安

これらの要因を総合的に判断した上で、抜歯の計画を立てます。 あくまで一般的な目安ですが、所要時間は以下のようになります。

  • 単純抜歯の場合: 約5分~15分 麻酔が効いてからの処置時間です。ほとんどの場合、あっという間に終わったと感じられるでしょう。
  • 難抜歯の場合: 約30分~60分 歯ぐきの切開や骨の開削、歯の分割などが必要になるため、時間がかかります。非常に複雑なケースでは90分ほど要する場合もあります。

保険適用でも費用は変わる?抜歯料金の目安

さて、抜歯の難易度や時間が人それぞれ違うことはお分かりいただけたかと思います。 そうなると次に気になるのは、やはり「費用」のことではないでしょうか。「すごく難しい抜歯になったら、料金も高額になるのでは…」と心配される方もいらっしゃるかもしれませんね。

まずご安心いただきたいのは、親知らずの抜歯は基本的に保険が適用される治療である、ということです。

ただし、同じ保険適用でも、患者様ごとにお支払いいただく費用は異なります。 なぜなら、これまでの章でご説明した「抜歯の難易度」によって、保険の点数が細かく定められているからです。

  • 単純抜歯:「まっすぐ生えていて、切開などを必要としない抜歯」の点数が適用されます。
  • 難抜歯:「歯ぐきの切開が必要な場合」「骨の開削が必要な場合」など、処置が複雑になるほど高い点数が加算されます。

つまり、「抜歯が大変なケースほど、費用も高くなる」というのが基本的な考え方です。

親知らず抜歯の費用目安(3割負担の場合)

以下に、自己負担3割の場合の、抜歯そのものにかかる費用の目安を記載します。

抜歯の難易度費用目安
まっすぐ生えている親知らず(単純抜歯)1,500円 ~ 3,000円
横向きや埋まっている親知らず(難抜歯)3,500円 ~ 6,000円
  • 上記はあくまで目安の金額です。
  • 初診料や再診料、レントゲン撮影料、お薬代などが別途必要となります。
  • より安全な抜歯のために、次にご説明する「歯科用CT」による精密検査を行った場合は、上記に加えて別途CT撮影料(3割負担で約3,500円~4,000円)がかかります。

正確な診断には歯科用CTが不可欠な理由

前の章で、抜歯費用に「CT撮影料」が含まれる場合があるとお伝えしました。 「レントゲンだけではダメなの?」「なぜ追加の検査が必要なの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

結論から申し上げますと、特に難しい親知らずの抜歯において、歯科用CTによる三次元的な検査は、安全性を飛躍的に高めるために不可欠です。従来のレントゲン(二次元)と歯科用CT(三次元)では、得られる情報量が全く異なります。 例えるなら、このような違いがあります。

レントゲン(2D)建物を正面から写した「写真」のようなもの。奥行きや裏側の様子は分かりません。
歯科用CT(3D)建物の「精密な模型」をあらゆる角度から眺められるようなもの。内部の構造まで立体的に把握できます。

では、この「精密な模型」によって、具体的に何が分かるのでしょうか。

CTでなければ分からない、3つの重要情報

1. 歯の根と「太い神経」の正確な位置関係

下の顎の骨の中には、「下歯槽神経(かしそうしんけい)」という、下唇や顎の皮膚の感覚を司る非常に大切な神経が通っています。下の親知らずは、この神経のすぐ近くに生えていることが少なくありません。 レントゲン写真では、歯の根と神経がただ「重なって見える」としか分かりませんが、CTなら、

  • 神経が根のすぐ横を通っているのか
  • 根の先端が神経に触れているのか
  • 根が神経を巻き込むように生えているのか

といった立体的な位置関係が、ミリ単位で正確に分かります。 この情報を事前に把握できるかどうかが、神経損傷という最悪のリスクを回避し、手術の安全性を確保する上で最も重要なのです。

2. 歯の根の複雑な形状

レントゲンでは一方向からしか見えないため、歯の根が手前や奥にどのように曲がっているのか、正確に把握することは困難です。 CTであれば、360度あらゆる角度から根の形を確認できるため、抜歯の際に根が折れてしまうリスクを最小限に抑え、スムーズな抜歯計画を立てることができます。

3. 骨の中に隠れた病気の有無

親知らずが原因で、骨の中に「嚢胞(のうほう)」という膿の袋ができてしまうことがあります。CTなら、こうしたレントゲンでは見つけにくい病変を早期に発見できる可能性が高まります。

CT撮影は、いわば「安全な抜歯のための詳細な地図」を手に入れるようなものです。 当院が精密検査をおすすめするのは、患者様のお体を第一に考え、あらゆるリスクを可能な限り回避するためなのです。

まとめ|ご自身の親知らずのタイプを知ることから始めましょう

まっすぐな親知らずと横向きの親知らずについて、抜歯の難易度や費用、そして精密検査の重要性まで解説してきました。

<今回のポイント>

  • 親知らずの生え方は様々で、それにより抜歯方法(単純/難抜歯)が異なる。
  • 難易度は「生え方」だけでなく、「根の形」や「骨の硬さ」なども影響する。
  • 費用は保険適用だが、難易度に応じて変動する。
  • 安全な抜歯のためには、CTによる三次元の精密診断が極めて重要。

ここまで読んで、「じゃあ、私の親知らずは一体どうなっているんだろう?」と思われたのではないでしょうか。 その疑問こそが、親知らずの漠然とした不安を解消するための、最も重要な第一歩です。

ご自身の親知らずの状態を正確に知ることなしに、「抜くべきか、抜かなくてもいいのか」「抜くならいつがいいのか」といった適切な判断はできません。痛みなどの症状がなくても、見えない部分で問題が進行している可能性もあります。

かわべ歯科クリニックでは、歯科用CTを完備し、一人ひとりの患者様に合わせた丁寧なカウンセリングと精密な診断を行っています。「親知らずがちょっと気になる」「一度診てもらいたい」という段階でも、まったく問題ありません。まずは、あなたの親知らずの”今”の状態を、私たちと一緒に確認することから始めてみませんか?どうぞお気軽に、ご相談ください。

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